会社で生成AIを使うとき、「どこまで入力していいの?」「出てきた答えは、そのまま使っていいの?」と迷うことはありませんか? 個人の判断にまかせていると、不安ですよね。
IPA(情報処理推進機構)が2024年7月に公開した「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」には、組織で生成AIを使うときの「利活用ガイドライン(ルール)」に書いておくとよいことが、まとまっています。第4章を中心に、やさしく紹介します。
どうして、ルールが必要なの?
利活用ガイドラインがないと、生成AIの使い方を使う人が自分で判断するしかなくなります。個人情報を入力して漏洩してしまったり、効果的な使い方が分からずに使うのをやめてしまったりする可能性が高くなります。
ガイドラインには、2024年1月にJIPDECが行った「企業IT利活用動向調査2024」の結果も、まとめられています。生成AIの利用規定やガイドラインを決めている企業の割合は、会社で構築・契約した生成AIを使っている企業で68.6%、社員が各自で契約・登録した生成AIを使っている企業で9.0%でした。ルールを決めないまま使っている企業が多い、というのが現状のようです。
ルールに書くこと①:利用の制限
利用の制限を決めておくと、組織の機密情報の漏洩や、利用者が意図せず違法行為に加わってしまうリスクを避けるのに役立ちます。
Anthropic社、Google社、OpenAI社は、利用規約で、主に次のような目的での使用を禁止しています。
- 違法行為や、違法行為を助長するコンテンツの作成
- 個人の心身や権利に害を及ぼすおそれのあるコンテンツの作成
- 本人の同意を得ずに他人の情報を利用すること
- 誤った情報の提供や、人をだます目的のコンテンツの作成(詐欺、なりすましなど)
さらに、組織のルールに反する内容の業務や、顧客情報・機密情報を扱う業務、外部公開前の情報を扱う業務、業務以外の目的での使用は、生成AIの利用制限を検討する必要があります。

ルールに書くこと②:AIへの入力について
入力については、「上手な指示の出し方」と「入力を制限する情報」の2つが挙げられています。
上手な指示の出し方(プロンプトエンジニアリング)
生成AIは、いつも思いどおりの答えを返してくれるとは限りません。指示(プロンプト)に含まれる要素として、「命令」「文脈」「入力」「出力」の4つがあげられています。4つすべてが必要なわけではありませんが、具体的に組み合わせると、目的の答えを得やすくなります。

AI会社が公式ドキュメントとして公開している、用途別のプロンプトのサンプルを参考にするのも、よい方法だそうです。
入力を制限したい情報
生成AIに入力した内容が学習データに使われると、ほかの人の生成物に、その情報が含まれる可能性があります。そのため、次の情報は入力を制限するよう推奨されています。
- 著作権で保護された情報: 似た内容が出力されると、著作権侵害となり、法的なトラブルや信用の失墜につながります。
- 個人情報: 氏名、住所、電話番号などが学習されて出力されると、プライバシーの侵害につながります。
- 組織の機密情報: 内部文書や、秘密保持契約を結んだ情報が入ると、漏洩のリスクがあります。

ルールに書くこと③:答え(生成物)の扱い
- 誤りの確認(ハルシネーション): 生成物には、現実に存在しない情報や事実と違う内容が含まれることがあるので、いつも正確さを確認します。対策の一つにRAGがありますが、完全になくすことはできません。
- 偏りの確認(バイアス): 特定の視点に偏っていないか、差別的な表現がないかを確認します。
- 引用するとき: 生成AIで作ったことを明示し、出どころを明らかにします。
- 著作権(2024年6月時点の情報): 生成物は、著作物にあたらない場合があります。一方、人が思想や感情を創作的に表現するための道具としてAIを使ったと認められれば、著作物にあたり、利用者が著作者になる場合もあります。議論が続いているので、動向を調べ続ける必要があります。
- 商用利用: 使う生成AIの利用規約で制限されている場合があるので、必要に応じて許可を得ます。
- 権利侵害の確認: 著作権侵害(既存のキャッチコピーなどと似ていないか)、商標権・意匠権の侵害、虚偽の個人情報や名誉毀損にあたらないかを確認します。
ルールを知ってもらうために
ガイドラインでは、利用者への教育も大切だとされています。eラーニングなどで利活用ガイドラインを広めること、効果的なプロンプトを共有すること、日報作成などで日常的に生成AIを使う文化をつくることが、取り組みの例です。ルールを作るだけでなく、使う人に伝わってはじめて役に立つ、ということですね。
この記事は、2024年7月時点のガイドラインをもとにしています。生成AIの分野は変化が速いので、お勤め先のルールがある場合は、必ずそちらを優先してください。
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出典
- IPA「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」(PDF・2024年7月) (2026年10月14日に確認)
- IPA「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」公開ページ (2026年10月14日に確認)
