会社のAI活用、どんな場面で?研究から経理まで6つの領域の事例

会社のAI活用、どんな場面で?研究から経理まで6つの領域の事例(総務省の白書)

「会社では、生成AIやAIエージェントを、実際どんなことに使っているの?」と気になりませんか。令和8年版の情報通信白書には、日本企業のAI活用事例が、業務の領域ごとにまとまっています。

取り上げているのは、各社が発表している取組です。効果や数字は、各社の説明として書いています。「こんな使い方があるんだ」と、イメージをつかむ気持ちで読んでみてくださいね。

6つの領域をざっと見てみよう

領域取り上げた会社どんなAI?
研究・商品開発中外製薬、パナソニックHDAI創薬、設計AI
調達ロート製薬複数のAIエージェントの連携
製造・生産ダイキン工業、NTTデータ、伊藤忠テクノソリューションズ熟練工AI、故障診断AI、システム開発の支援
マーケティング電通、サイバーエージェントマーケティングAI、広告の自動生成と審査
顧客との接点明治安田生命、Gen-AX、イオンデジタル秘書、音声対応、店舗のAIアシスタント
経営・コーポレートキリンHD、ラクスAI役員、経費精算の自動化
企業のAI活用の6つの領域

研究・商品開発:薬づくりから設計まで

中外製薬は、「AI創薬」を中心に業務構造全体の改革に取り組み、研究の効率化だけでなく、新しい価値を生み出すことも目標にしています。病気のターゲット探しや、医薬品の分子デザインに機械学習などを使い、薬づくりの期間の短縮や成功確率の向上を目指しているそうです。作業にロボットを入れて自動化・省力化も進める方針で、自社のデータだけでなく、他社との連携にも積極的だとしています。

パナソニックホールディングスの「設計AI」は、シミュレーション技術とAI技術を掛け合わせたもので、モデルの作成からシミュレーションによる評価、形状の決定までを自動化・高速化するとしています。設計で重要なポイントをヒートマップで見える化することで、重要な部分に絞った設計ができ、部品モーターの出力など性能が上がるほか、計算速度が従来の7倍になったとしています。

調達:複数のAIエージェントが連携

ロート製薬は、サプライチェーンが複雑になり、人の経験や知識に頼った調整が難しくなっていることを課題としています。そこで2025年12月、富士通の「マルチAIエージェント技術」と、東京科学大学との共同研究で開発した「サイバーフィジカルシステム(CPS)」の実証実験を始めると発表しました。工場や物流の状態をリアルタイムでとらえるCPSに、調達管理AIエージェントや在庫管理AIエージェントなどを組み合わせ、工場間・倉庫間の輸送の最適化や、生産スケジュールの自動調整などを目指します。欠品や過剰在庫を抑えた安定供給、CO2排出量の削減、人手不足の解消に役立つとしています。

製造・生産:熟練の技を受け継ぐAI

  • ダイキン工業:熟練のエンジニアが将来減ることを見込み、ウェアラブル端末で撮影した作業映像から、空調機の点検・修理の抜け漏れを自動でチェックし、スマートフォンに通知する「熟練工AIエージェント」を自社開発しました。経済産業省とNEDO主催の「GENIAC-PRIZE」で最高賞の第1位と、特別賞の「AIエージェント賞」を受賞しています。日立製作所と共同で、異常を見つけたときにタブレットで質問すると、故障かどうかや原因、対策を示す「故障診断AIエージェント」も導入しています。多言語に対応し、海外拠点でも使えるとしています。
  • NTTデータ:システム開発の工程そのものをAI中心に変える「AIネーティブ開発」に取り組むとしています。AIが顧客の要望を分析して要件定義書を作り、別のAIがプログラミングをします。人間の技術者は、AIが作ったプログラムの点検や全体の管理に集中し、不具合や改善点があればAIに修正を指示する形です。
  • 伊藤忠テクノソリューションズ:顧客との会話をもとに業務フローの生成、改善の提案、書類づくりまでAIが支援する「Acsim」を提供しています。従来1か月以上かかっていた要件定義のプロトタイピングが1時間に短縮できるとしています。

マーケティング:広告づくりもAIと

電通は、カスタマージャーニー(商品を知ってから買うまでの流れ)の作成や、コンテンツ生成ツールなど、マーケティングの幅広い業務にAIを入れています。1億人規模の仮想ペルソナを再現するAIモデル「People Model」で、時間の制約を受けずにインタビューやアンケート調査ができ、対象者を集めにくい属性にも調査できるとしています。

サイバーエージェントは、インターネット広告では制作物の量がとても多いため、生成AIの活用は欠かせないとしています。効果的な広告の文章や画像を予測して自動生成する「極予測シリーズ」を開発し、動画広告についても、AIによる完全自動の生成を2026年中に実現することを目指すとしています。広告主が決めたルールに沿ってAIが審査する「審査AI」も提供しています。

顧客との接点:営業、電話、お店で

  • 明治安田生命:AIの「デジタル秘書」をほぼ全従業員に提供し、面談記録の作成やデータの蓄積を支援しています。今後は、AIエージェントが過去の面談情報や社内情報を参照して、次の提案内容や提案書づくりを自律的に支援する構想です。余力を、顧客サービスの向上にシフトしていくとしています。
  • Gen-AX(ソフトバンクの子会社):24時間365日、音声での問い合わせに対応できる「X-Ghost」を開発しています。顧客とやりとりするオペレーターAIと、発話やシステムの動きを監視・制御するモニタリングAIが連携しています。
  • イオン:従業員向けにマニュアルなどを学習させた端末「AIアシスタント」を、一部の店舗で導入しています。免税対応、商品の配送、落とし物の管理など幅広い業務のマニュアルを学習し、音声入力にも対応していて、現場の従業員に好評で、「黒子」として負担を軽くしているといいます。
顧客との接点でのAI活用

経営・コーポレート:AI役員から経費精算まで

キリンホールディングスは、過去10年分の取締役会などの議事録、社内データ、外部の最新情報を読み込ませ、財務やマーケティングなど異なる役割を持たせた「AI役員」(CoreMate)を開発しました。経営会議に出す案を出す人が事前の「壁打ち」に使い、いろいろな経営の視点を取り込める、資料の精度も上がるとしています。

ラクスは、スマートフォンのアプリで領収書を選ぶだけで、AIエージェントが精算データを自動で作り、事前申請やクレジットカード明細の紐づけ、勘定科目の入力も自動化する経費精算サービスを提供しています。社内ルールに沿っているかのチェック機能もあり、申請の時間短縮や負担の軽減につながるとしています。

まとめ:AIは「人の仕事を支える道具」として広がっている

これらの事例には、点検の抜け漏れのチェック、会議前の壁打ち、面談記録づくり、マニュアルの検索など、人の仕事を支える使い方が多く出てきます。NTTデータの例のように、AIが作ったプログラムの点検や全体の管理は、人間が担うとしているものもあります。AIを使うときの注意点は、関連記事も合わせて読んでみてください。

AI活用の事例から見えること

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出典

(いずれも2026年10月16日に確認)