AIに頼ると、考える力はどうなる?2つの研究と専門家の見方

AIに頼ると、考える力はどうなる?2つの研究と専門家の見方(総務省の白書)

生成AIは便利ですが、頼りすぎると自分で考える力が落ちるのでは、と心配になりますよね。

この記事では、総務省「令和8年版 情報通信白書」の「人間の記憶や思考能力とAI」で取り上げている、2つの研究と専門家の見方をまとめました。どちらが正しい、という結論ではなく、「こんな研究がある」という紹介です。

AIの利用がプラスになるという研究

ドイツのレーゲンスブルク大学のチームが行った研究では、学生を「独自開発のAI支援ツールを使う群」と「AIを使わない群」に分け、2つの課題に取り組ませました。作成したアイデアを、複数の分野の専門家の評価など、客観的な方法で評価しています。

  • AIを使った群は、使わなかった群より、短い時間で、質の高いアイデアを発想できたといいます。
  • 知識の共有が進む、発想の過程が速くなる、効率が上がる、アイデアが多様になるといったことが示唆されました。
  • 結果への満足度や、作業への関与度も高いことが示唆されました。

チームは、アイデアを発想する段階では、創造性と作業効率の両方を高めるうえで、AIが重要な役割を果たすことを示している、としています。

AI利用のプラスとマイナスを指摘する2つの研究

AIに頼るとマイナスになるという研究

一方で、AIに頼ることがマイナスの影響をもたらすと指摘する研究もあります。MIT Media Labなどのチームの研究では、参加者を3つに分けて、小論文を書く作業を3回行いました。

  • 生成AI(大規模言語モデル)を使う群
  • 検索エンジンを使う群
  • 何も使わず、自分の頭だけで作業する群(Brain-only)

そのあと、3回目までAIを使った群にはツールなしで、3回目までツールを使わなかった群にはAIを使わせて、もう一度書いてもらいました。作業中は脳波や神経活動を測定し、書いた小論文は人間と専用に作ったAIが評価、作業後にはインタビューも行っています。

  • 自分の頭だけで作業したあとにAIを使った群は、記憶をより良く思い出せ、広い領域で神経活動の再活性化が見られたといいます。
  • 検索エンジンを使った群でも、似た神経活動のパターンが見られました。
  • 最初からAIを使った群は、脳内の神経結合が比較的弱く、書いたばかりの自分の文章を正確に引用する力も比較的低い結果でした。
  • 「自分の成果だ」という感覚(オーナーシップ)は、最初からAIを使った群で最も低く、検索エンジンを使った群は比較的高いものの、最初に何も使わなかった群には及びませんでした。

専門家は、どう見ている?

白書では、新しい技術のプラスとマイナスの捉え方について、専門家のコメントを紹介しています。

  • 唐沢かおり教授(東京大学大学院):「便利で快適なものがよい」という見方と、「そうしたものは人間本来の自律性を失わせるからダメになる」という見方、どちらも主張できます。そのうえで、どんな価値を重視して、どんな社会を目指すのかを議論し、姿勢や態度、あり方を検討することが重要だと述べています。
  • 山口真一教授(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター):長期的には、これまで人間が行ってきたことの一部はAIに置き換わっていくだろうと見ています。そのうえで、人間ひとりでは能力の低下が起こりうるかもしれないが、人間とAIの「協働」によって、トータルの人間の能力は向上するのではないか、と指摘しています。
専門家2人の見方

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出典