やたら大げさなタイトルの動画や、「ええっ!?」と言いたくなるニュースの見出し。つい、クリックしてしまった経験はありませんか?
実はそこには、「見てもらうこと」そのものがお金になる、というしくみがあります。ここでは、アテンション・エコノミーという考え方と、ネットで見かける例、そして情報との向き合い方をまとめました。
アテンション・エコノミーって、どんなもの?
世の中には情報があふれていて、私たちが使える時間には限りがあります。そのため、「注目(アテンション)」や、情報を見る時間が貴重になり、お金のような価値を持つようになりました。これを「アテンション・エコノミー」と呼びます。
かんたんに言うと、「見てもらえること自体に価値が生まれている」状態です。私たちの1日は24時間しかないので、自分の情報を見てほしい人たちが、その時間を奪い合っている、とも言えます。
ネットで見かける、アテンション・エコノミーの例
動画サイトでは、たとえば次のような例が知られています。どれも、たくさん見てもらうことで利益を得ています。
- 迷惑系動画:過激な行動や迷惑行為で注目を集めます。撮影禁止の場所で配信したり、犯罪行為で逮捕されたりした例もあります
- 暴露系動画:スキャンダルや内部告発で注目を集めます。他人のプライバシーを侵害したり、真偽が分からない情報を決めつけて叩いたりすることがあります
- 私人逮捕系動画:「悪い人を捕まえました」という様子を配信します。実際には、私人逮捕の条件を満たしていないケースもあり、投稿者が逮捕された例もあります
- サムネイル詐欺:動画の中身と合わない、大げさなサムネイル(表紙の画像)をつけます
たとえば、台風が迫る中のライブ配信で、配信者が「すごい風!」と叫んでいるのに、まわりの人は不思議そうに見ている、という場面があります。実際は、そこまでの悪天候ではないのです。
ニュースの見出しにも、つい開きたくなる工夫が
ネットニュースでも、思わずクリックしてしまう見出しを見かけます。開いてみたら、大した内容ではなかった、という経験はありませんか? 情報をぼやかしたり、わざと勘違いさせたりする見出しもあります。
| 見出しの例 | 中身 |
|---|---|
| タレントの「変わり果てた姿」にネット衝撃!「絶句した」「ショック」「びっくり」 | 若い女優さんが、ドラマで老婆の役を演じたことを報じているだけ |
| あの有名女優!SNSでファンに向けて、たった4文字で投稿 | 「おはよう」と投稿しただけ |
| 友人に送迎を頼んだらガソリン代を請求された。ひどいと思いませんか? | 「そんなの当たり前」という反発を呼んで、クリックされることを狙ったもの |
ステマも、アテンション・エコノミーの一種です
こんな問いかけがあります。「私はとても信頼される人間です」という人と、「この人はとても信頼できる方です」という人。どちらが信頼できると感じますか? きっと多くの人が、後者を選ぶでしょう。でも、後者のほうが信頼できるという確かな根拠は、何もありません。
これは、「第三者を介した情報は信じられやすい」という心理効果です。タレントにこっそり商品を宣伝してもらう「ステルスマーケティング(ステマ)」は、この効果を使っています。広告だと見てもらえなくても、無関係の誰かが発信している情報なら信じてしまいがち、という私たちの錯覚を利用しているのです。日本では、2023年10月から、景品表示法でステマが禁止されています。
どうして、こんなに増えたの?
大きな理由は、SNSや動画サイトで発信することで、個人でも収益を得られるようになったことです。
- 動画に流れるCMで、配信者が報酬を得られるサービスがあります
- 一部のSNSには、投稿の閲覧数に応じて報酬がもらえるしくみがあります
- ライブ配信で視聴者から届く「投げ銭」だけで生活している人もいます
- SNSに投稿したマンガが話題になって、そのままプロのSNSマンガ家になった人もいます
大きな会社や事務所に所属しなくても、住んでいる場所がどこでも、自宅から発信できる。新しい才能が埋もれずに世に出る、とても素晴らしいしくみです。
ただ、誰でも簡単に発信できるということは、不確かな情報やウソ、間違い、極端な考えも発信できる、ということでもあります。過激になるほど報酬が増えるなら、根拠のない誹謗中傷で閲覧数を稼ぐなど、歯止めが利かなくなるおそれもあります。
こんな困りごとにつながることも
- 社会全体のむだ:世の中が不確かな情報であふれると、すべてを疑わなければならず、むだなコストが生まれます。社会に不信感が広がるおそれもあります
- 選挙:根拠を示さず、閲覧数を稼ぐだけの投稿もあります。「その情報は間違いだった」と分かったときには、投票も開票も終わっているかもしれません
- 災害デマ:ウソの救助要請が拡散されると、それを信じて救助に向かった結果、本当に助けが必要な人を助ける人手が足りなくなるおそれがあります。人の命に関わります
- 医療の情報:関心が高く広まりやすいぶん、不確かな情報を信じてしまうと、深刻なことにつながりかねません
- AIの悪用:本当の救助要請が拡散するようすをAIが見て、「こういう投稿をすると広まるのか」と判断し、似た投稿を大量に作ることも可能です
どうすればいい?「だれが得をするのか」を考えよう
ポイントは、「見せたい人がいて、見せたい理由がある」ということです。情報に出会ったら、まず一呼吸おいて、次の3つを思い浮かべてみましょう。
- これを見せたいと思っている人は、だれだろう?
- なぜ、見せたいのだろう?
- 拡散されると、何が起きるのだろう?
その情報で、だれが得をするのか。いつも意識する姿勢が大切です。そして、「世の中は、情報を見てほしい人たちであふれている。その中には、間違った情報や偏った情報も含まれている」というフレーズを、覚えておきましょう。
注目を集めることが優先されると、情報全体の質が下がるおそれがあります。その一方で、多様な情報や考え方が広く共有されやすくなる、という良い面もあります。どちらの面もあることを知ったうえで、ネットと付き合っていきたいですね。
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出典
- 総務省「インターネットとの向き合い方~はじめてのアテンション・エコノミー~」(2026年10月21日に確認)
- 同「講師用ガイドライン」(PDF)(2026年10月21日に確認)
